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キックの鬼こと、沢村忠氏からことわざを学ぼう!
昭和の格闘技史を代表するスーパースターで、「キックの鬼」の愛称で親しまれた元キックボクサーの沢村忠さんが、令和3年、3月26日に肺がんのため亡くなられました。
沢村さんは自身の代名詞にもなった華やかな大技「真空飛び膝蹴り」でKOを量産し、日本中を熱狂させるとともに、後の格闘家たちに大きな影響を与えました。
一般的な知名度こそ高くはないかもしれませんが、1973年には三冠王に輝いたプロ野球の王貞治氏(読売ジャイアンツ)を抑え、日本プロスポーツ大賞を獲得するほどの人気、実力を誇り、半生を描いた漫画やテレビアニメ『キックの鬼』でも人気を博しました。
沢村さんは、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』『死中に活をもとめよ』『身をすててこそ浮かぶ瀬もあれ』などといった言葉を座右の銘として、自らを追い込み、数々の偉業を成し遂げられました。
というわけで、沢村忠さんのご冥福をお祈りして今日のことわざは・・・
今日のことわざ『虎穴に入らずんば虎子を得ず』
虎穴に入らずんば虎子を得ず(こけつにいらずんばこじをえず)
意味 ・・・ 危険を避けては、大きな成功は得られないということ。
『虎穴に入らずんば虎子を得ず』の意味、由来
虎穴に入らずんば虎子を得ず とは、中国後漢朝について書かれた歴史書『後漢書』の班超伝にある、
不入虎穴、焉得虎子
という一節に由来する故事になります。
虎穴とは虎の巣穴のことで、
ご存じの通り、虎は獰猛な動物の代表格ですね。
当然、虎の巣穴に入るということは極めて危険な行為です。
ですが、虎の子を得ようとすれば、巣穴に入らなければなりません。
つまり、虎穴に入らずんば虎子を得ず とは、
虎穴に入ることを危険な行為、
虎の子を得ることを成功を収めることにたとえ、
危険を避けては、大きな成功は得られない という意味になります。
また、『虎子』は、『虎児』とも書かれます。
さらに、『後漢書』の班超伝にある、『不入虎穴、焉得虎子』 の前後の話の流れ要約しますと・・・
漢の武将班超が楼蘭(ろうらん)という国に使者として行った時、当初は歓迎されていたのですが、次第に対応が悪くなってきました。
不思議に思って探りを入れて見ると、後から敵対する北匈奴の使者が大人数で来ていたことが分かりました。
そこで班超は、このままでは北匈奴の者たちに殺されてしまうと怯える部下達を、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』と鼓舞して、兵数劣勢のなか奇襲をかけて北匈奴を撃退したのでした。
『虎穴に入らずんば虎子を得ず』の類義語、対義語
危ない橋も一度は渡れ(あぶないはしもいちどはわたれ)
意味 ・・・ 危険だとわかっていても、あえて冒険してみなければ成功はないというたとえ。
危ない所に登らねば熟柿は食えぬ(あぶないところにのぼらねばじゅくしはくえぬ)
意味 ・・・ 冒険を恐れては、成功は得られないということ。
石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)
意味 ・・・ 用心の上にさらに用心を重ねて物事を行うこと。
君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)
意味 ・・・ 教養のある人は自分の行いを慎み、危険だとわかっているところには近寄らないということ。
命あっての物種(いのちあってのものだね)
意味 ・・・ 何事も命があってこそ初めてできるものだということ。
棚から牡丹餅(たなからぼたもち)
意味 ・・・ 何も努力していないのに、思いがけず幸運が転がりこんでくること。
こんな場面で使おう!『虎穴に入らずんば虎子を得ず』を使った例文
成功を収めるために危険を冒さなければならない場面において、教訓や覚悟の言葉、自他ともに鼓舞する言葉などとして使われます。
・虎穴に入らずんば虎子を得ず、挑戦にはリスクは付き物だ。
・社長は今後の会社の命運を決めるプロジェクトだと、虎穴に入らずんば虎子を得ずの覚悟で商談に臨んだ。
・劣勢のまま試合は終盤に入り、我がチームは、虎穴に入らずんば虎子を得ずといった捨て身の作戦に切り替えた。
・虎穴に入らずんば虎子を得ずというが、彼の行動は危なっかしくて見ていられない。
・いつもは冷静で慎重なタイプの彼女だが、ここぞという時には、虎穴に入らずんば虎子を得ずのごとく大胆な行動を起こす。
『虎穴に入らずんば虎子を得ず』を英語で表現すると?
Nothing venture, nothing have.
(冒険しなければ何も得られない)
The more danger the more honor.
(危険が大きくなるほど名誉も大きくなる)
No risk No reward.
(リスクなしでは報酬もない)
などと表現できます。
まとめ
人生において、石橋をたたいて渡るような用心深さは大切なことですが、時にはリスクを承知してでも勝負に出なければならない時もあります。
そんな時にしっかりと覚悟を決めて、力を出し切るためにも、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』ということわざを胸の中に秘めておきたいものですね。