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星野源さんと新垣結衣さんの結婚『逃げ恥婚』から、ことわざを学ぼう!
新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の発令、東京オリンピック開催の是非など、不安な話題ばかりが先行するなか、星野源さんと新垣結衣さんの結婚というおめでたい知らせが届きましたね。
2016年に放送された人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で夫婦を演じたお二人だけに、“逃げ恥”婚と沸き立っているようです。
私もこのドラマは全話視聴しましたが、当初は『逃げるは恥だが役に立つ』という取っ付きにくいタイトルには首を傾げたものでした。
文字通り受け取って考えてみると・・・
逃げるということは恥ずべきことであるが、役に立つ といったところでしょうか。
『逃げる』という恥じるべきネガティブな行動が役に立つ・・・
しっくりこない鈍感な私はネットで検索してみたものです。
人気ドラマのタイトル『逃げるは恥だが役に立つ』は、ハンガリーのことわざだった・・・
すると・・・
「Szégyen a futás, de hasznos.」というハンガリーのことわざの和訳で、
「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切」とのことでした。
作中では、契約結婚という社会の常識から外れた関係を周囲にばれないように演じる二人でしたが、それぞれに言い分や役に立つことはありました。
新垣結衣さん演じるみくりは、生きていくためには働いてお金を稼がなければなりませんし、星野源さん演じるエリートエンジニアの津崎平匡は、一人暮らしでの家事の負担を減らすことが目的で、みくりの仕事ぶりには満足していました。
結婚という社会常識からは逃げた二人が合意した契約結婚は、お互いにとって役に立つことだったということですね。
一般的には臆病者、卑怯者と揶揄される『逃げる』という行動を上手く肯定した面白い、ことわざ、タイトルだとは思いませんか?
また、日本で浸透していることわざにも、逃げることを肯定したものがありますので、今日のことわざとして紹介したいと思います。
今日のことわざ『三十六計逃げるに如かず』
三十六計逃げるに如かず(さんじゅうろっけいにげるにしかず)
意味 ・・・ 形成が不利になった時(困った時)にはあれこれ考えず、逃げるのが最善策であるということ。
『三十六計逃げるに如かず』の意味、由来
『三十六計逃げるに如かず』とは、中国南朝の斉について書かれた歴史書・『南斉書』の王敬則伝にある一節、「敬則曰、『檀公三十六策、走是上計』」 に由来する表現になります。
「敬則曰、『檀公三十六策、走是上計』」を前後関係を含めて要約すると・・・
中国、南北朝時代に、南朝の王敬則が反乱軍を率いて斉の国王・蕭道成(しょうどうせい)を攻めた際、斉王父子が逃走したと聞いて、『檀公三十六策、走是上計』(名将・壇道済(たんどうせい)が著した「兵法三十六計」には、様々な兵法があるが、走って逃げるのが一番の策である)と、王敬則は逃走した斉王父子を嘲った。
という内容になります。
つまり、「敬則曰、『檀公三十六策、走是上計』現代語に訳すと、
王敬則がいうには、名将・壇道済が書いた兵法三十六計には様々な兵法があるが、逃げるのが一番の策である。という意味になります。
このように本来は、敵前逃亡する者を卑怯者と嘲る意味でしたが、それが転じて現代では、逃げることを得策とする意味合いの表現になっています。
※兵法三十六計 ・・・ 南北朝時代の南朝宋の将軍檀道済が著した、戦における戦術を六系統・三十六種類に分類した兵法書。そして、兵法三十六計の一つに『走為上』( 勝ち目がないならば、戦わずに全力で逃走して損害を避ける。)という策があります。
『三十六計逃げるに如かず』の類義語、対義語
逃げるが勝ち(にげるがかち)
意味 ・・・ 無駄な戦いや愚かな争いなら、避けて逃げるほうが得策だということ。
当たって砕けろ(あたってくだけろ)
意味 ・・・ 結果はどうなるかわからないが、とにかく思い切って行動せよということ。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ(みをすててこそうかぶせもあれ)
意味 ・・・ 自分の命を捨てる覚悟で取り組めば、危機を脱し、活路を見出せるということ。
※正確な対義表現としては厳しいですが、近いものとして挙げておきます。
こんな場面で使おう!『三十六計逃げるに如かず』を使った例文
・一投手としては真っ向勝負したい思いもあるが、一塁が開いていることだし、三十六計逃げるに如かずで、ここは敬遠しよう。
・三十六計逃げるに如かずという言葉があるように、無理して勝ち目のない戦いに挑むべきではない。
・ギャンブルの極意は、三十六計逃げるに如かず、いかに負けを少なくすることだ。結果の予想できないレースでは勝負するべきではない。と競馬好きの上司が言っていた。
・三十六計逃げるに如かず、時にはプライドを捨てて逃げることも必要である。
・長い間クレーム対応に携わる私の仕事の流儀は、三十六計逃げるに如かず、とにかく謝り続けることである。
『三十六計逃げるに如かず』を英語で表現すると?
英語にはこれらのような比喩的な表現があります。
One pair of heels is worth two pair of hands.
(一対の踵は二対の手に値する)
※ たとえ手が二対あったとしても、一対の踵(かかと)のほうが逃げるときに役立つということから。
Discretion is the better part of valor.
discretion ・・・ 分別、思慮、思慮深さ、慎重さ valor ・・・ 勇気
(用心深さは勇気の大半である)
まとめ
長い人生において、多くの壁があなたの前に立ち塞がるでしょう。
そんな時、あなたはどうしますか?
登れそうな壁なら頑張って登るべきですし、ぶち壊したっていいでしょう。
ですが、どうしても登れない壁、ぶち壊せない壁もあります。
そんな時は、抜け道を探したり、壁の脆い部分から攻めたり、遠回りしてでも壁を避けて前に進めばいいんです。
『逃げる』という行為は決して恥ずかしいことではありません。
壁の前で立ちすくんで、前に進もうとしないことが恥ずかしいことなのです。
自分が輝ける、力を発揮できる場所で、精一杯輝けばいいんです。
時には肩の力を抜いて、逃げる勇気を持っておきましょう。
その勇気が役に立つことが、きっとありますから・・・。