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2021年4月現在、新型コロナウィルスは収束の兆しを見せるどころか、感染力の強い変異株を伴う第4波が到来し、猛威を振るっています。
緊急時代宣言を解除したのも束の間で、都市部ではまん延防止措置が適応されている状況です。
フットワークが悪く、後手を踏んでばかりの政府の対策への批判も多くあるようですが、なかなか簡単にはいきませんよね。
もちろん、ウィルスの拡大、被害を最小限に抑え込み、医療従事者の負担を減らし、医療体制を整えることが一番の課題ではありますが、
一方で、経済を回して国民の生活を維持し、失業者を減らし、救済しなければなりません。
外出自粛の要請、営業時間の短縮や縮小の要請が出されるたびに、主に飲食業、観光業の方たちの悲痛な声が報じられ、当然その声は政府にも届いているでしょう。
まさに、『あちらを立てればこちらが立たぬ』といった状況になってしまっています。
すべての人を幸せにすることが理想の政治ではあるのでしょうが、難しい話ですよね。
というわけで、今日のことわざは・・・
今日のことわざ『あちらを立てればこちらが立たぬ』
あちらを立てればこちらが立たぬ(あちらをたてればこちらがたたぬ)
意味 ・・・ 一方を良くすれば一方が良くならない。双方にとって都合のいい状況は、難しいということ。
『あちらを立てればこちらが立たぬ』の意味、由来
ここでの『立てる』とは、『顔を立てる、面子を立てる』などの時に使う『立てる』になり、『尊重する、面目を保つ、都合よくする』といった意味になります。
あちら(片方)の都合のいいようにすれば、こちら(もう一方)の方は、不利になったり、嫌な思いをすることになってしまいます。
双方を傷つけることなく、面目を保つことが理想ですが、なかなか難しく、そうはいかないものです。
このことから、『あちらを立てればこちらが立たぬ』とは、
一方を良くすれば一方が良くならない。双方にとって都合のいい状況は、難しいことである。
という意味になります。
また、「あちらを立てればこちらが立たぬ、双方立てれば身が立たぬ」と続けても言われる場合もあります。
それでは、『あちらを立てればこちらが立たぬ』を、嫁姑問題の間に入った夫を例に考えてみましょう。
夫が姑(自分の母親)の味方ばかりしていたら、妻は面白くありませんし、夫が妻の意見ばかりを尊重して、姑(自分の母親)をないがしろにしてしまうと、姑は拗ねてしまうでしょう。
一概には言えませんが、このように、双方(嫁と姑)をどちらも傷つけることなく、円満に同居生活を送ることは難しいことと言われていますね。
他の例を挙げれば、あなたが友人同士のけんかの仲裁に入ったとしましょう。
あなたが一方の意見ばかりに同調すれば、もう一方の友人は納得がいかず、不満に思うでしょう。
また、その逆も同じですね。
けんかなんて、どちらにも言い分があるものです。
これらのように、一方(あちら)を立てれば、もう一方(こちら)は、なかなか立たないものです。どちらにもいい顔をしていると、あなたの方が『八方美人』と突っ込まれてしまいますからね。
八方美人(はっぽうびじん)
意味 ・・・ 誰からもよく思われようとして、みなに対し愛想よくふるまう人のこと。
『あちらを立てればこちらが立たぬ』の類義語、対義語
出船によい風は入り船に悪い(でふねによいかぜはいりふねにわるい)
意味 ・・・ 一方によければ他方に不利で、両方によいことはないというたとえ。出船に都合のよい順風は、入り船にとっては逆風になるということから。
頭押さえりゃ尻上がる(あたまおさえりゃしりあがる)
意味 ・・・ 両方うまくはいかないということ。頭を押さえれば尻が持ち上げるように、片方がうまくいけば、もう一方がうまくいかなくなるということから。
痛し痒し(いたしかゆし)
意味 ・・・ かけば痛いし、かかないと痒いということで、どちらを選んでも具合が悪く、どうしたら良いか迷ってしまうこと。
共存共栄(きょうぞんきょうえい)
意味 ・・・ 自他ともに生存し、ともに繁栄すること。
こんな場面で使おう!『あちらを立てればこちらが立たぬ』を使った例文
・あちらを立てればこちらが立たぬ、中間管理職とは苦しい立場である。
・どんなに考えても、あちらを立てればこちらが立たぬで、けんかの仲裁に入ったが、双方を納得させることができなかった。
・あちらを立てればこちらが立たぬで、みんなにいい顔をしようなんて、甘い考えだった。
・部長と課長がそれぞれに指示を出してくるので、平社員の私としてはあちらを立てればこちらが立たぬで、困ってしまう。
・家賃が浮いて小遣いが増えるからと親との同居を始めたはいいが、あちらを立てればこちらが立たぬで、毎日のように嫁からも姑からも責め立てられて、私はもう限界だ。
『あちらを立てればこちらが立たぬ』を英語で表現すると?
比喩的な表現ではありませんが、英語ではこのように表せます。
It is hard to please all parties.
(全ての人を喜ばせるのは難しい)
まとめ
新型コロナウィルスへの政府の遅れた対応には、多くの批判的な声がありますが、ウィルスの拡大、被害を食い止めながら経済を回すということは非常に困難なことです。
また、置かれた状況、立場によって生まれる意見の違いも大いに存在します。
『あちらを立てればこちらが立たぬ』となってしまった結果、後手を踏んでしまうことには一定の理解を示さなければならないのかもしれませんね。