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現在、大ヒット上映中の話題の映画『えんとつ町のプペル』ですが、作品のすばらしさもさることながら、公開にあたってのインタビューなどから伝わる、
製作総指揮・原作・脚本を手掛けた、キングコングの西野亮廣さんの作品に込めた強い想いにおいても話題となっていますね。
お笑いコンビキングコングとして若くして栄光をつかんだ西野氏でしたが、
彼の先を見据えた発想や行動は、芸人仲間にも世間にも良く映らないことが多く、強い反感を買っていた不遇の時代も長くありました。
その時の辛い経験から、彼は映画『えんとつ町のプペル』の公式HPにおいて、このようなメッセージを記しています。
「えんとつ町」は夢を持てば笑われて、行動すれば叩かれる現代社会の縮図で、『えんとつ町のプペル』は僕自身の物語でもあります。テレビの外に飛び出した日、絵本を描き始めた日、あの日この日。
前例の無い挑戦を選ぶ度に、暇を潰すように笑われ、日本中から叩かれ、
悔しくて震えた夜は何度もありました。公式HPより引用:https://poupelle.com/
今回は、大変恐縮ですが、コロナ禍の真っ只中に、映画えんとつ町にプペルによって感動を下さった西野氏の気持ちを、
ことわざ広場として勝手に代弁させて頂きたいと思います。
というわけで、今日のことわざは・・・
今日のことわざ『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや』ことわざを、『映画えんとつ町のプペル』から学ぼう!
燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや(えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや)
意味 ・・・ 小さな志しか持たない者には、大きな志を持つ者の考えがわからないというたとえ。
『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや』の意味、由来
「燕雀(えんじゃく)」は、「燕(つばめ)」と「雀(すずめ)」のような小さな鳥、
「鴻鵠(こうこく)」は、「鴻鵠」は、オオハクチョウのような大型の鳥を意味します。
「いずくんぞ」は漢文訓読の用語で、あとに推量を伴って反語を表し、『どうして…だろうか』という意味になります。
すなわち、『小さな鳥にどうして大きな鳥の心がわかるだろうか』から転じて、
小さな志しか持たない者には、大きな志を持つ者の考えがわからないという意味のことわざ(故事成語)になります。
『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや』の由来
中国前漢時代の歴史家・司馬遷(しばせん)によって編集された歴史書「史記(しき)」にある「陳渉世家(ちんしょうせいか)」の一節に由来するとされています。
※世家 ・・・ 中国の名家についてその家系を記録した書物。
陳渉とは、秦の始皇帝亡き後、劉邦や項羽に先んじて、呉広とともに秦に対する反乱を起こした秦代末期の最初の反乱指導者です。
もともとは家柄も身分も低く、若い頃は日雇い農夫をしていました。
そんな陳渉が、自身の雇い主に対して大きなことを言ったことがありました。
ですがその時、雇い主に、分不相応と馬鹿にされました。
家柄だけで人の人生が決まってしまうような時代ですので仕方のない反応だったでしょうが、
陳渉は、
「嗟呼 燕雀安知鴻鵠之志哉」
ああ、燕(ツバメ)や雀(スズメ)のごとき小鳥に、どうして鴻(オオトリ)や鵠(くぐい)といった大きな鳥の志がわかろうか)と意に介さなかったとあります。
その後、陳渉はその言葉の通り、
『王侯将相寧んぞ種有らんや』
(おうこうしょうそう いずくんぞ しゅあらんや:指導者は血筋や家柄ではない)
と農民たちを率いて反乱を成功させ、身分や家柄に囚われることなく実力で王位の座にまで伸し上がり、「張楚」という国を建てて王位につくまでに出世したのでした。
『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや』の類義語、対義語
鷽鳩大鵬を笑う(がくきゅう たいほうを わらう)
意味 ・・・ つまらない者には大人物の志がわからないというたとえ。小さい鳩(ハト)が、大鵬(大型の鳥)が天高く舞い上がるのを笑うということから。
名人は名人を知る(めいじんはめいじんをしる)
意味 ・・・ 名人と言われるような人は、相手の技量や物事の本質を瞬時に見抜く才能があるということ。
こんな場面で使おう!『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや』を使った例文
大きな夢を持つ者を激励したり、夢や目標を笑われてもバカにされても挫けずに我が道を行けという励ましの言葉、
偏見や先入観、視野の狭さ、僻み妬みなどによって、人の夢や目標をバカにする者を揶揄する言葉として使われます。
・燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや、パソコンも使えない両親に、プログラマーになるという私の夢が理解されるはずがないだろう。
・大企業の社長を務める方の講演を聞いたが、個人事業主の私には理解し難い点が多くあった。燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやということなのだろうか、器の違いを痛感して、少し切なくなってしまった。
・燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや、医学部に入学するために休憩時間までも勉強していたぼくをガリ勉とバカにしたやつらを絶対に見返してやる。
・就職もしないで小説家を目指し、家族の中で肩身の狭い思いでいる私に、祖母だけは、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやと励ましてくれたものだ。
・誰にも理解してもらえないからといって、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやと不貞腐れるのではなく、自ら歩み寄ることも大切だ。
・燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや、ライト兄弟だって、ガリレオだって、ニュートンだって、偉業を達成した人は、初めは誰もが嘲笑されたり非難されたりしたものだ。
『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや』を英語で表現すると?
Ask not the sparrow how the eagle soars.
直訳すると、
(鷲はどのようにして大空を舞うのかと雀に訊ねるな)
となり、鷲には雀の気持ちがわからないということから転じて、燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんやと同じ意味の表現になります。
他には、反対の意味から、その真意を伝えるようなニュアンスでは、
Only a hero can understand heroism.
(英雄のことは英雄にしか分からない)
とも表現できます。
まとめ
今日のことわざ『燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや』は、身分や家柄に囚われることなく実力で王位の座にまで登り詰めた「陳渉・呉広の乱」の立役者、陳渉の有名なセリフでしたが、
陳渉は、最終的に仲間の恨みを買い、部下によって殺されてしまいました。
ですが、秦国滅亡への大きな志は漢の高祖・劉邦へと受け継がれ、時代は大きく変わっていきました。
そして、『えんとつ町のプペル』を描いた西野亮廣氏においても、やっと時代が彼に追い付いてきたようで、今では固定ファンだけでなく、芸人仲間、一般視聴者からも大きな支持を得てきています。
コロナウィルスの影響でなかなか足を運べない方もおられるでしょうが、是非、劇場の大きなスクリーンで、彼の『鴻鵠の志』を観てはいかがでしょうか。
私個人としては、ここ数年で最もお勧めの作品です!
最後に、映画上映に際しての西野氏からのメッセージをお借りして締めたいと思います。
公開を来年に延期する話も上がりましたが、どっこい、『えんとつ町のプペル』は黒い煙を突き破り、星空を見つけるまでの希望の物語です。
2020年に公開する意味がある作品だと思いました。
もはや『えんとつ町のプペル』は一個人の物語ではありません。
この作品が、コロナ禍で負けそうになりながら、それでも踏ん張っている全ての人への応援歌になると幸いです。公式HPより引用:https://poupelle.com/