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NHK大河ドラマ『青天を衝け』から、ことわざを学ぼう!
2021年NHK大河ドラマ『青天を衝け』で描かれた渋沢栄一氏は、主に藍玉の製造販売を生業とする農家に生まれ、幼い頃から父と共に、藍玉を売り歩き、原料の藍葉の仕入れ調達を行うなかで商才を開花させたといいます。
というわけで、当サイトでは、世界的にも『ジャパンブルー』と評される日本の伝統文化である藍染にまつわることわざをいくつか紹介してきましたが、今回も江戸時代に隆盛を極めた染物屋(紺屋)についてのことわざを深堀りしていきたいと思います。
今日のことわざ『紺屋の明後日』
紺屋の明後日(こうやのあさって)
意味 ・・・ 約束の期日が当てにならないことのたとえ。
『紺屋の明後日』の意味、由来
まず、『紺屋』とは、江戸時代に染め物屋を指す言葉になります。
そして、藍染が大流行していた江戸時代においては、染め物屋とは藍染を生業とする場合がほとんどでした。
ここで、藍染の工程をざっくり解説しますと・・・
藍の葉を加工した藍玉を水で溶かした染料に生地を浸けて色を染み込ませ、生地が染まってきたら一旦取り出して、染料から出た灰汁(あく)などをきれいに洗い流します。
その後、天日干しにして乾燥させます。
この三つの工程を何度も繰り返しながら、表現したい色合いに仕上げていきます。
そのため天候(雨や湿度)によって仕上がりまでの日数は大きく左右されてしまいます。
また、染める生地の素材によって染まり方は様々でしょうし、染料も天然のものですので、いくら熟練した技術を持つ職人でも、思うようにいかない時だってあったでしょう。
これらの理由から、藍染の仕上がりが遅れてしまうことは日常茶飯事なことでした。
そして、お客さんから催促された場合には、
と言い逃れをして納期を先延ばしにしていたそうです。
このことから、『紺屋の明後日』とは、
約束の期日が当てにならないことのたとえ。
という意味として使われるようになったのです。
また、『俳諧・毛吹草(1638)』に見られる表現で、これに由来していると言われています。
『紺屋の明後日』の類義語、対義語
明後日紺屋に今晩鍛冶屋(あさってこうやにこんばんかじや)
意味 ・・・ 信用できないこと、約束が当てにならないことのたとえ。紺屋と鍛冶屋は注文した日に品物が納期に間に合わないことが多かったところから。
医者の只今(いしゃのただいま)
意味 ・・・ あてにならないことのたとえ。医者が往診の時、すぐ行くと言っても、なかなか来ないところから。
問屋の只今(とんやのただいま)
意味 ・・・ 約束の期日が当てにならないことのたとえ。問屋が、「ただいま送ります」と言いながら、なかなか品物を送らないころから。
季布一諾(きふのいちだく)
意味 ・・・ 絶対に破られることのない固い約束や承諾のたとえ。また、一度した約束や承諾は必ず守ることのたとえ。
こんな場面で使おう!『紺屋の明後日』を使った例文
・彼の紺屋の明後日のような悪い癖が災いして、ついに国税の税務調査が入ったらしい。
・私はフリーになって以来、お客さんから紺屋の明後日だと信頼を失わないように、納期は絶対に守るようにしている。
・いつも紺屋の明後日のようなことばかりいている彼は、DVDの延滞料金を再々払っているそうだ。
・営業の仕事をしていると、様々な誘いを受けることがあるが、そのほとんどが社交辞令みたいなもので、まさに紺屋の明後日だ。
・コロナ禍での持続化給付金の給付日はまるで紺屋の明後日で、多くの経営者の不安を募らせている。
・会社で気になる女の子を何度も食事に誘っているのだが、『そのうちね』という返事ばかりで、まさに紺屋の明後日だ。
『紺屋の明後日』を英語で表現すると?
英語にはこのような比喩的表現があります。
One of these days is none of these days.
・「そのうちに」という日は来ない。
まとめ
いつの時代も、信頼こそが商人にとって最も大切なものだと言えるでしょう。
ですが、紺屋の明後日 ということわざがあるように、いかに藍染が熟練した技術を必要とし、天候に左右される難しいものだと想像できますね。
現代では化学染料が主流となっていますが、藍にしか出せない味わい深い色合いもいいものですよ。