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スポーツの世界でもビジネスの世界でも、恋愛であっても、相手よりも先に攻めて、物理的にも精神的にも優位に立ち、流れを掴むということは、非常に基本的で重要な戦術とされていますね。
スポーツの大一番の試合に向けて、コメントを求められた専門家達は皆口を揃えて、
『まず先取点を取って、相手にゲームの主導権を握らせないように・・・』
などと言いますよね。
もう聞き飽きてしまい、実に面白味のない月並みな表現に思えてしまいますが・・・
先手を取ってしまえば、相手にプレッシャーを与え、本来の実力を発揮させず、試合の主導権を握ることができます。
主導権を握り、精神的優位に立つということは、自分たちのスタイルを貫き、余裕を持っていつもの力が発揮できるということです。
野球でたとえれば、0対0 の接戦よりも、味方が早い段階で先取点を取ってくれた時の方が、ピッチャーは何倍も伸び伸びといい投球ができますよね。
バッターにしても、余計なプレッシャーを感じることなく、打席に立つことができます。
『先手必勝』という言葉では、『先に攻めれば』『必ず勝つ』と言い切っちゃってますからね。
初戦のロシア戦では試合開始直後には選手の緊張、固さが目立って、『先んずれば人を制す』には程遠い状態でしたが、今後は初戦の勝利による余裕もでき、自分たちのラグビーで勝ちをかさねてくれることでしょう・・・
というわけで、今日のことわざは・・・
今日のことわざ『先んずれば人を制す』
先んずれば人を制す(さきんずればひとをせいす)
意味 ・・・ 先手を取れば、相手を抑え、優位に立つことができるということ。
解説
『先んずれば人を制す』とは、中国の歴史書『史記』の一節にある文に由来する故事で、
『先んずれば人を制し、遅れれば人に制される』
意味 ・・・ 人よりも先に行動を起こせば人の先頭に立って指示を出せるが、人の後から行動を起こせば、人に指示され支配されることになる。
が、省略された表現になります。
『制する』の意味としては、『制覇』『制御』など、漢字のニュアンスから簡単に連想できますね。
現代では、スポーツ界、ビジネス界で非常に多く使われる表現ですが、由来としては、『戦(いくさ)』での戦術、奇襲が基となったことわざです。
類義語 対義語
類義語
機先を制する(きせんをせいする)
意味 ・・・ 相手よりも先に行動し、相手の計画や勢いを抑えること。
風邪をひいても後手引くな(かぜをひいてもごてひくな)
意味 ・・・ 後手を引いたり、後手後手になると不利なので、先手をとることが大切だということ。「ひく」が掛詞になっている。
先手は万手(せんてはまんて)
意味 ・・・ 機先を制することは、後手になるよりも有利であるということ。先は千であり、万よりも先(前)にあるという洒落でもある。
対義語
急がば回れ(いそがばまわれ)
意味 ・・・ 焦って、危ない近道を行くより、遠回りだけれど安全で確実な道を行くほうががよいということ。
急いては事を仕損じる(せいてはことをしそんじる)
意味 ・・・ 急いですると失敗しやすくなるので、慎重にした方がいいということ。
ここで面白いことに気づきましたので、早速お伝えしておきます。
文部科学省の国語教育課程においての学年別のことわざの構成についてですが・・・
『先んずれば人を制す』の類義語は、難易度が高いのに対して、対義語は早い段階で学ぶことわざとされています。
私の予想ですが、これは国語的な教育方針だけでなく、幼い児童に対する道徳的教育要素も含まれているのではないでしょうか。
まだ落ち着きがなく、行動に不安がある幼い児童には『じっくり考え、慎重に行動する』ということを学ばせ、そのことをすでに理解し、自分で考え、行動に責任を持つことができる年齢になった頃に、『先手を取り優位に立つ』という戦術を学ばせるという意図があると私は考えます。
いくら『先んずれば人を制す』と言っても、ただ闇雲に攻撃的になるだけでは、早々に足元をすくわれてしまいますからね。
こんな側面にも注意すれば、より国語教育の奥深さを感じることができるのではないでしょうか。
こんな場面で使おう 例文
例文 日本代表チームは、先んずれば人を制すと、序盤から攻撃的なラグビーで相手チームにプレッシャーを掛けた。
例文 新入社員の中にとてもかわいい女の子がいたので、先んずれば人を制すと、どんな性格の子かも知らないままデートに誘ったら、とんでもない女だった。
例文 私の開発案に対する会社の結論は、商品化するには時期尚早だが、先んずれば人を制すで、特許申請だけは済ましておこうというだった。
例文 先んずれば人を制すと、選挙のずっと前から積極的に町民たちと触れ合ってきた彼は、初出馬ながら見事にトップ当選を果たした。
例文 実力が拮抗した対戦においては、先んずれば人を制すで、先手を取ったほうに流れが大きく傾くものだ。
例文 先んずれば人を制すで、先発ピッチャーにとって、早い回での先取点ほどありがたいものはない。
例文 先んずれば人を制すで、まだ誰もやっていないことに挑戦することは、非常に価値があることだ。
英語での表現は・・・
First come, first served.
直訳すれば、(最初に来た者が最初に食物を供せられる)となります。
The foremost dog catches the hare.
直訳すれば、(先頭の犬が兎を捕らえる)となります。
どちらの英文も、先手を取ること、先に行動することの優位性、特権を表しており、同義の表現となります。
まとめ
『先んずれば人を制す』、そればかりに捕らわれていては正直なところ、今後日本代表が戦っていく強豪国には逆に『飛んで火にいる夏の虫』のように撃破されてしまう可能性が大きいでしょう。
飛んで火にいる夏の虫(とんでひにいるなつのむし)
意味 ・・・ 自ら進んで危険に飛びこむことのたとえ。
ですが、そこは世界屈指の練習量、それによって得たチームワークを誇る日本代表です。
キャプテンのリーチ・マイケル選手だけでなく、チームの精神的支柱となる油がのりにのった頼れる選手がたくさんいますから、しっかりと自分たちのラグビーで日本初開催のワールドカップを盛り上げてくれることでしょう。