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長瀬智也主演、宮藤官九郎脚本ドラマ『俺の家の話』から、ことわざを学ぼう!
長瀬智也さん主演、宮藤官九郎さん脚本のドラマ『俺の家の話』ですが、いよいよ物語も終盤に入り、盛り上がりを見せていますね。
多くの門弟を抱える能の宗家(観山家)となる家族を舞台にして繰り広げられるホームドラマで、
能だけでなく、家族の絆、親の介護、遺産相続、離婚問題、子供の学習障害、恋愛など、多くのテーマについて描かれ、非常に見応えがあり、私は毎週楽しみにしています。
今回は先日の『初心忘るべからず』に続いて、世阿弥が残した言葉としても有名なことわざを紹介したいと思います。
では、ドラマの中で最後の家族旅行として訪れたハワイアン温泉で、『純烈』のパロディーグループとして登場した阿部サダオさん率いる『潤沢』の歌のタイトルにもなっていた『秘すれば花』という言葉について深く掘り下げていきましょう。
今日のことわざ『秘すれば花』
秘すれば花(ひすればはな)
意味 ・・・ 隠すということの中にこそ、本当の感動がある、ということ。
『秘すれば花』の意味・由来
『秘すれば花』という言葉は、世阿弥が最初に書いた『風姿花伝』という伝書の一節に由来しています。
世阿弥は役者として舞台で演じるだけでなく、多くの謡曲をつくる脚本家でもあり、また、能の理論書として21種もの伝書を残しています。
『風姿花伝』には、
「秘すれば花なり秘せずは花なるべからず」
(秘めるからこそ花になる、 秘めねば花の価値は失せてしまう)
とあります。
つまり、美しさや面白さによって観客を感動させる能の神髄を『花』とたとえ、
それをあえて秘する(秘密にする)ことによって、観る者の想像力を掻き立てれば、より大きな感動を生み出すことができるという意味になります。
秘すれば花という言葉を書き残した『風姿花伝』に始まり、集大成として書いた『花鏡』などの伝書の題名からもわかるように、世阿弥は『花』という言葉が多用しています。
現在でも芸能の世界で『華(花)がある』という表現が使われますが、これも世阿弥が残したものだといわれています。
『秘すれば花』の類義語、対義語
申し訳ありません・・・。
適切な類義、対義表現が見つかりませんでした。
少々強引ですが、類義表現として挙げれば、『サプライズ』なんかどうでしょうか?
こんな場面で使おう!『秘すれば花』を使った例文
・彼の詩は抽象的な表現ばかりでわかりにくい部分もあるが、秘すれば花で、とても心が揺さぶられる。
・人を楽しませるには、秘すれば花という意識は大切なことだ。
・能が大好きなおじいちゃんは、『秘すれば花だよ』と、回りくどい言い方ばかりするので、面倒くさい時がある。
・彼女は社内の人間とは付き合おうとせず、私たちは彼女のプライベートを全く知らない。秘すれば花というが、とてもミステリアスで素敵な女性だ。
・秘すれば花ということなのか、先日観た映画は、様々な受け取り方ができるようなラストで、すでに続編を待望する声が上がっている。
『秘すれば花』を英語で表現すると?
世阿弥が残した伝書は、能の芸道論としてだけでなく、日本文学の古典としても評価が高く、何度か外国語にも翻訳されています。
それらの文献では『秘すれば花』とは、このように英訳されています。
When you keep it secret, it’s the flower. Unless you keep it secret, it cannot be the flower.
If it is hidden, it is the Flower; if it is not hidden, it is not the Flower.
When there are secrets, the Flower exists, but without secrets, the flower does not exist.
まとめ
全てをさらけ出したストレートな表現には、潔さやかっこよさがありますが、世阿弥が説いている『秘すれば花』には情緒や奥深い味わいがありますね。
そして、『秘すれば花』の精神は奥ゆかしい日本人の美学、美意識に大いに通じるところがあるように思います。
実行するには難しいかもしれませんが、心のどこかに置いておきたい素晴らしい表現ですね。