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長引くコロナ禍から、ことわざを学ぼう!
丸一年以上も続いているコロナ禍において、飲食業は最も経済的打撃を受けている業種の一つでしょう。
急激に遠のいた客足や度重なる時短要請による売り上げ低下に耐え切れず、廃業を余儀なくされたお店も多い聞きます。
生き残りをかけてテイクアウトや宅配、オンライン販売に注力して踏ん張っているお店もあるようですが、近況は厳しいところが多いようです。
国からの補助金もあてにならず、やむなく暖簾を下すお店のことを思うと、寂しい気持ちになってしまいます。
ですが、これまで身に付けてきた料理の技術や、お客さんと築いてきた信頼関係までが亡くなってしまうわけではないと思います。
というわけで、コロナのせいで暖簾を下すことになってしまった方(お店)の復活を祈って、またその『暖簾』を称えて、
今日のことわざは・・・
今日のことわざ『暖簾を下す』
暖簾を下ろす(のれんをおろす)
意味 ・・・ その日の営業時間が終了する、閉店すること。商売をやめること。店じまいをすること。
『暖簾を下す』の意味、由来
まず、『暖簾』とは、主に飲食店の店先や銭湯の入り口に吊り下げられた切れ目の入った布のことです。
古くは、商店に限らず建物や部屋に直接風や光が入るのを防いだり、外からの目隠しとして、内と外を柔らかく仕切るためのものでしたが、
次第に商店の営業の目印とされるようになり、
開店とともに暖簾を掲げ、閉店になると暖簾を外すことで、営業時間、休業時間を示しすようになっていきました。
その習慣(開店とともに暖簾を掲げ、閉店になると暖簾を外す)が転じて、商売をやめること。店じまいをすること。という意味が追加され、
暖簾を下す(のれんをおろす)
意味 ・・・ その日の営業時間が終了する、閉店すること。商売をやめること。店じまいをすること。
という表現が生まれました。
また、暖簾には、家紋や屋号を染め抜いたものや、
何を提供するお店か一目でわかるようなものなどがあり、
お店の看板としての役割も果たすようになっていきました。
その結果、『暖簾』という言葉は商売についてのことわざを中心に広く使われています。
(広くとはいっても、『暖簾を下す』を含めても5つですが・・・)
ここで『暖簾』が使われた有名な表現を紹介しておきますね。
暖簾に腕押し(のれんにうでおし)
意味 ・・・ 少しも張り合いや手応えがないことのたとえ。
暖簾に傷が付く(のれんにきずがつく)
意味 ・・・ 店の信用を失うこと。
暖簾を分ける(のれんをわける)
意味 ・・・ 長く勤めた店員に新たに店を出させ、同じ屋号を名乗らせること。
暖簾師(のれんし)
意味 ・・・ 悪い品をごまかして売りつける商人。
このように、暖簾と商売には深い縁があるとわかりますね。
『暖簾を下す』の類義語、対義語
看板を下ろす(かんばんをおろす)
意味 ・・・ 廃業する。店をたたむ。掲げていた主義・主張などをとりやめる。
店を畳む(みせをたたむ)
意味 ・・・ 商売をやめる。また、その日の営業を終える。店じまいをする。
旗揚げ(はたあげ)
意味 ・・・ 新しく事を起こすこと。
※商売に限った表現ではありませんが、一応、対義語として挙げておきます。
こんな場面で使おう!『暖簾を下す』を使った例文
・大好きなお店がコロナのせいで暖簾を下すことになっては困るので、私は余計な出費を抑えながら、毎日テイクアウトを利用している。
・長年地元の住民に愛されてきたラーメン屋が後継者不在のために暖簾を下すそうだ。
・着物離れが進むにつれて、暖簾を下す老舗の呉服屋が増えてきているそうだ。
・石橋貴明氏のユーチューブの『東京アラートラン』という企画は、美味しいお店、愛されているお店に、暖簾を下して欲しくないという思いから生まれたのだろう。
・駅前に大型商業施設ができて以降、商店街では暖簾を下すお店が相次ぎ、今ではいわゆるシャッター商店街になってしまった。
『暖簾を下す』を英語で表現すると?
英語には暖簾を下すというような慣用表現はないようです。
この場合は、close, give up, shutter などの動詞で表現します。
close [give up] one’s business としたり、
He decided to shutter his store.
shutter ・・・ シャッターを閉める(店などがシャッターを下ろして一時的または永久的に)休業する(業務を)終了する
日本語的には『シャッター』と言えば、名詞としてのイメージが強くありますが、動詞として、このような意味もあります。
まとめ
商売をされている方にとって、『暖簾』とは、店の看板であり、今まで築いてきた信頼、そして誇りでしょう。
コロナ禍で一時的に下すことになったとしても、それは生き続けるものだと思います。
一日も早い終息を、元通りの日常をがやってくることを祈るばかりです。