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今日のことわざ『弘法筆を選ばず』の意味、由来、類義語、対義語、使い方、英語表現などをエピソード付きで徹底解説!

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2021年夏の甲子園『智辯和歌山 VS  智弁学園』史上初の兄弟校決戦から、ことわざを学ぼう!

2021年夏の全国高等学校野球選手権大会は、智弁学園高校(奈良県代表) 対 智弁和歌山高校(和歌山県代表)という史上初の兄弟校同士の決勝戦となり、熱戦の末、智弁和歌山高校の優勝で幕を閉じました。

両校とも甲子園常連の野球強豪校として全国的にも高い知名度を誇っていますが、ここで、知名度の割にはあまり知られていない、両校のルーツについてかんたんにお話しておきます。

智弁学園、智辯和歌山高校共に、宗教法人・辯天宗(べんてんしゅう)を母体とした私立高校になります。

辯天宗(べんてんしゅう) ・・・ 大森智辯氏によって開かれた、日本の仏教の宗派。高野山真言宗の流れを汲み、仏教系新宗教に分類される宗教法人。

そして、そのルーツとなる高野山に総本山を構える真言宗とは、ご存じの通り空海(弘法大師)が、816年に開いた日本仏教の宗派の一つですね。

真言宗の開祖としてだけでなく、書家としても文人としても抜きんでた才能を発揮した空海は、ことわざにも度々使われました。

というわけで、今日のことわざは・・・

今日のことわざ『弘法筆を選ばず』

今日のことわざ
 

弘法筆を選ばず (こうぼうふでをえらばず )

意味 ・・・ その道の名人や達人と呼ばれるような人は、道具や材料のことを問題にすることなく、見事に使いこなすということ。

『弘法筆を選ばず』の意味、由来

ここでの『弘法』とは、空海が醍醐天皇から贈られた諡号『弘法大師』のことで、『筆』とは、そのまま書道で使う筆になります。

諡号(しごう) ・・・ 貴人や高徳の人に、死後に贈る名前。

空海は遣唐使の使節団と共に中国に渡り、真言宗の基となる密教や、それにまつわる中国語、インド語、サンスクリット語に加えて、様々な書体を会得しました。

書家としての腕前も当代一流で、三筆に数えられるほどでした。

三筆(さんぴつ)は、日本の書道史上の能書のうちで最も優れた3人の並称であり、平安時代初期の空海・第52代天皇・嵯峨天皇(さがてんのう)・橘逸勢(たちばな の はやなり)

このことから、『弘法筆を選ばず』とは、

空海ほどの書の達人であれば、筆を選ばずとも立派に書き上げることができる。

それが転じて、

その道の名人や達人と呼ばれるような人は、道具や材料のことを問題にすることなく、見事に使いこなすということ。

という意味になりました。

つまり、技量が優れていれば道具の良し悪しには左右されず、実力を発揮できるということですね。

また、下手な者が自分の技量のなさや失敗を道具や材料のせいにするのを戒めた言葉としても使われます。

そして、江戸中期(1724頃)に柳沢淇園が著した随筆『独寝』に、

能書筆を選ばず

とあり、これに由来するものだと考えられます。

能書 ・・・ 文字を巧みに書くこと。また、その人。

この言葉が、数多くある空海の伝説と相まって、『弘法筆を選ばず』と形を変えて現代まで伝わったのでしょう。

というもの、空海が書いた漢詩集『性霊集』には、

良工まずその刀を利くし、能書は必ず好筆を用う。

現代語訳:腕の立つ職人は第一に道具を手入れし、書に秀でた者はよい筆をつかうものだ。

とあり、道具の大切さを説いています。

また、空海は書体によって筆を使い分け、筆(道具)へのこだわりは非常に強かったと伝わってもいます。

この事実から、本家の「弘法筆を選ばず」ほどではありませんが、その反対で、法筆を選ぶ』という表現も一般的に浸透しています。

それぞれに諸説あるようですが、空海の偉大さが容易に想像できますね。

『弘法筆を選ばず』の類義語、対義語

類義語
 

善書は紙筆を選ばず(ぜんしょしひつをえらばず)

能書は筆を選ばず(のうしょふでをえらばず)

意味 ・・・その道の名人や達人と呼ばれるような人は、道具や材料のことを問題にすることなく、見事に使いこなすということ。  

対義語
 

下手の道具調べ(へたのどうぐしらべ)

意味 ・・・ 腕の悪い者に限って、道具について、あれこれ口うるさいということ。

藪医者の病人選び(やぶいしゃのびょうにんえらび)

意味 ・・・ 技量のない者ほど仕事のえり好みをするというたとえ。

弘法筆を選ぶ(こうぼうふでをえらぶ)

意味 ・・・ その道の名人や達人と呼ばれるような人は、道具や材料に強いこだわりを持つものだということ。

こんな場面で使おう!『弘法筆を選ばず』を使った例文

例文
 

・こんな包丁では魚は捌けないと言うお父さんに、弘法筆を選ばずということわざを教えてあげた。

弘法筆を選ばずと言うが、職人にとって道具は命の次に大切なものだ。

・試合中にラケットが折れるというアクシデントがあったが、弘法筆を選ばず、エースの彼はチームメイトのラケットを借りて見事に勝利を収めた。

弘法筆を選ばずとはよく言ったもので、バイト先の料理長は余り物の食材だけですごく美味しいまかない料理を作ってくれる。

弘法筆を選ばずとあるように、自分の未熟さを道具や環境のせいにしているようでは何事も上達しないだろう。

『弘法筆を選ばず』 を英語で表現すると?

英語には、これらの比喩的表現があります。

The cunning mason works with any stone.

cunning ・・・ 悪賢い、ずるい、狡猾な、抜け目のない

mason ・・・ 石工

・熟練した石工はどんな石でも仕事をする。

A bad  carpenter always blames his tools.

・下手な大工は道具に難癖をつける

carpenter ・・・ 大工

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まとめ

ことわざには、視点、状況、立場などの違いから、全く逆の意味を持つ教えや教訓が多くあります。

善は急げ ⇔ 急いては事を仕損じる

虎穴に入らずんば虎子を得ず ⇔ 君子危うきに近寄らず

鶏口となるも牛後となるなかれ ⇔ 長い物には巻かれよ

亀の甲より年の功 ⇔ 麒麟も老いては駑馬に劣る

など・・・

今回紹介した、弘法筆を選ばず も、全く逆に、弘法筆を選ぶ ともいわれます。

一体、どっちが正解なんだよ?

ってなっちゃいますよね。

これについては、そもそも道具の良し悪し、自分との適性が理解できるようになるには、かなりの鍛錬を要しますよ。

始めのうちは、道具にはこだわらず、上達して更に意欲が出てきてから道具にこだわっていけばいいのではないでしょうかね。

 

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