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ボクシングへ転向する那須川天心選手の挑戦から、ことわざを学ぼう!
先日、キックボクシング・RISE世界フェザー級王者の那須川天心選手(22)が、来年(2022年3月)をもってキックボクシングを引退し、ボクシングに転向することを発表しました。
キックボクサーとしては残り2~4試合を予定しており、その後、2022年中のボクサーデビューを目指しているそうです。
那須川選手は、史上最年少(16 歳)でRISEのバンタム級王座を獲得し「神童」「キックボクシング史上最高の天才」などと称され、日本の格闘技界を大いに盛り上げてくれました。
また、元ボクシング世界5階級チャンピオンのフロイド・メイウェザーとの対戦は、格闘技ファンのみならず、世界中に大きな反響を呼びましたね。
そして那須川選手はボクシング転向への思いを、
無敗のチャンピオンとして挑まれる立場のキックボクシングは一旦ここで卒業し、自分がゼロからの挑戦者になれるボクシングの道を次のフィールドとして選びました。
と語っていました。
いずれもパンチでの攻撃があり名前も似ていますが、ボクシングとキックボクシングは似て非なるもので、険しい道のりになると考えられますが、
『一芸は道に通ずる』ということわざもあります。
若くしてキックボクシングを極め、頂点まで登りつめた那須川選手です。
今後の活躍に大いに期待しましょう。
といわけで、今日のことわざは・・・
今日のことわざ『一芸は道に通ずる』
一芸は道に通ずる( いちげいはみちにつうずる)
意味・・・ 一つの芸道を極めた者は、他のことにおいても才能を発揮するということ。
『一芸は道に通ずる』の意味、由来
『一芸は道に通ずる』には元になった二つの表現があると考えられています。
一つは、室町時代に能を大成させた世阿弥が書いた、能の伝書である『風姿花伝』にある『一芸は万芸に通じる』、
もう一つは江戸時代初期の剣豪、宮本武蔵が書いた『五輪書』にある『一道は万芸に通じる』という表現です。
時代としては世阿弥の方が遥かに古くなりますが、『風姿花伝』は能の世界だけに伝えられえきた秘伝の書で、世に出たのは近代に入ってのことですので、いずれもオリジナルの表現と言えるでしょう。
意味としては、
一芸(一つの芸や道)を極めた者は、他の分野にも通じる道理を心得ているということ。
となります。
少し噛み砕いて言うと、
学問、スポーツ、芸術、芸能、どんなことでもその道を極める過程では、誰もが何度も壁にぶつかり、挫折も味わうでしょう。
ですが、道を極めるにはそれでもあきらめずに努力、工夫をして前に進んでいくしかありません。
そんななかでの経験、身に付けた能力や知恵は、新たに何かに挑戦する時、たとえそれが全く異なった分野だろうが、必ず役に立つものだ。
という意味になります。
そして、『一芸は万芸に通じる』『一道は万芸に通じる』という二つの表現をもとにして、新たに『一芸は道に通ずる』ということわざが生まれたと考えられます。
プロ野球選手にはゴルフの腕前もプロ級という人が多くいますが、これはまさに『一芸は道に通ず』ということでしょう。
また、日本では考えられない事例ですが、アメリカでは、バスケットボールとアメリカンフットボールといったように二つの競技に取り組み、その両方でプロからドラフトで指名されるということは珍しい話ではありません。
バスケの神様と呼ばれたマイケル・ジョーダン氏は、引退後、メジャーリーグに挑戦していますし、
相撲の世界で横綱まで登りつめた曙関は、相撲にスカウトされるまではバスケットボールでプロを目指していたといいます。
芸能界でも、『東京03』のようにコントで培った超一流の演技力を活かして、多くのドラマに出演している方もいます。
実際にこのような言葉を残した世阿弥も、役者として舞台で演じるだけでなく、多くの謡曲をつくる脚本家でもあり、また、能の理論書として21種もの伝書を残し、それらは能の芸道論としてだけでなく、日本文学の古典としても高く評価されています。
宮本武蔵においても、剣の道を極めたというだけでなく、剣術の奥義をまとめた兵法書『五輪書』を著したり、書画などにおいても非凡な才能を発揮した人物で、代表作となる水墨画「枯木鳴げき図」は国の重要文化財に指定されているほどです。
このように、『一芸は道に通ずる』とは、彼らが様々なことに挑戦してきたなかで経験し、導き出した表現なのでしょう。
『一芸は道に通ずる』の類義語、対義語
一芸は万芸に通じる(いちげいはまんげいにつうじる)
一道は万芸に通じる(いちどうはまんげいにつうじる)
一芸に達する者は、諸芸に達する(いちげいにたっするものは、しょげいにたっする)
一芸に長ずれば、多芸に長ず(いちげいにちょうずれば、たげいにちょうず)
類語表現としては、このように多くの言い回しがあります。
多芸は無芸(たげいはむげい)
意味 ・・・ あれこれと芸の多い人は、一つの芸をとことん極めることが少ないため、結局は芸がないに等しいということ。
器用貧乏(きようびんぼう)
意味 ・・・ どんなことも一応は器用にこなすために、あちこちに手を出し、どれも中途半端となって成功しないこと。また、器用なために他人に利用されたりして、損ばかりしていること。
正確な対義表現とは言えませんが、反対の意味に近い表現として挙げておきます。
こんな場面で使おう!『一芸は道に通ずる』を使った例文
・一つの科目を徹底的に勉強すれば、一芸は道に通ずるようにその他の科目の成績も伸びてくるものだ。
・身体の使い方を熟知した一流のスポーツ選手は、一芸は道に通ずるで、専門外の競技でも存分に能力を発揮する。
・彼は本職はお笑い芸人でありながら、俳優、歌手、作家、画家、映画監督など多くの肩書を持っているが、実際はどれも中途半端で、一芸は道に通ずるというよりも、多芸は無芸や器用貧乏という表現の方がお似合いだ。
・サーフィンとスノーボードの世界では、一芸は道に通ずるで、両方でプロとして活躍する選手が多い。
・一芸は道に通ずるということわざがあるが、一つのことを極めていく過程で身に付けた技術や知恵もさることながら、それによって生まれた自信も大きく影響しているのだろう。
・一芸は道に通ずるで、彼女が新体操で培った表現力は、演技にも存分に活かされている。
『一芸は道に通ずる』を英語で表現すると?
英語にはこのような比喩的な表現があります。
He can say nothing that cannot speak well of his own trade.
(自分の商売が自慢出来ないものは何も言えない人間である)
まとめ
2021年4月現在、新型コロナウィルスの猛威で外出を自粛し、家で過ごす時間が増えた方が大半だと思います。
この際、何か一つのことに取り組んだり、得意なことをさらに追及してみてはいかがでしょうか?
その過程で得た能力だけでなく、努力、工夫、自信は、あなたの『一芸』となり、今後の人生においての新たな挑戦を後押してくれることでしょう。